繋がる空の下、繋がらない電話
それから二日間、更に思い悩んだけれどやはり彼からは連絡がない。
私はもう居てもたっても居られなくて、何でもいいから話がしたくて、当たり障りの無いメール文章を考えた。
【そっちは雪ですか】
送信ボタンを押すまでに悩むこと数十分。
繋がって欲しい、でも、別れ話を言われるなら繋がってほしくない。
恐怖が勝って、私はそのメールを破棄した。
*
「なあに、揉めてんの?」
翌日、ついに思い余って友達の晴海(はるみ)に相談すると、そんな風に笑われた。
「揉めてるというか、連絡がない」
「自分からすりゃいいじゃないの」
「自分ばっかりが嫌なの」
フラれそうで怖い、なんて情けないことは言えず、そんなことを口にしたら晴海は呆れたように笑った。
「遠距離なんてさー、意地はっても仕方ないんじゃないの?」
「だって」
「だってさ、遠距離で言うワガママって、冗談にならなくない?」
「どういう意味?」
「会いたいって言って、彼が本当に来るまでにどれほどの苦労や金銭がかかる? 頻繁にそんなことしたら付き合ってられないでしょ」
「それは……まあそうなんだけど。でも恋人同士よ? 甘えるくらい良くない?」
「じゃあさ、恵利は彼から会いに来てって言われたらすぐ行けるの?」
「それは」
行けない。
会社だってあるし、飛行機だって土日は結構埋まってるから取れるかわからないし。
自分に置き換えて考えれば、彼に無理難題を言ってることはちゃんと分かる。