繋がる空の下、繋がらない電話

 それから二日間、更に思い悩んだけれどやはり彼からは連絡がない。
私はもう居てもたっても居られなくて、何でもいいから話がしたくて、当たり障りの無いメール文章を考えた。


【そっちは雪ですか】


送信ボタンを押すまでに悩むこと数十分。

繋がって欲しい、でも、別れ話を言われるなら繋がってほしくない。
恐怖が勝って、私はそのメールを破棄した。





「なあに、揉めてんの?」


 翌日、ついに思い余って友達の晴海(はるみ)に相談すると、そんな風に笑われた。



「揉めてるというか、連絡がない」

「自分からすりゃいいじゃないの」

「自分ばっかりが嫌なの」


フラれそうで怖い、なんて情けないことは言えず、そんなことを口にしたら晴海は呆れたように笑った。


「遠距離なんてさー、意地はっても仕方ないんじゃないの?」

「だって」

「だってさ、遠距離で言うワガママって、冗談にならなくない?」

「どういう意味?」

「会いたいって言って、彼が本当に来るまでにどれほどの苦労や金銭がかかる? 頻繁にそんなことしたら付き合ってられないでしょ」

「それは……まあそうなんだけど。でも恋人同士よ? 甘えるくらい良くない?」

「じゃあさ、恵利は彼から会いに来てって言われたらすぐ行けるの?」

「それは」


行けない。
会社だってあるし、飛行機だって土日は結構埋まってるから取れるかわからないし。

自分に置き換えて考えれば、彼に無理難題を言ってることはちゃんと分かる。

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