ヘタレぼりゅーしょん
「さ~くら~!」



終令と同時に咲良の彼氏、川瀬君が教室にとびこんできた。


いつにもましてテンション高めな彼に、周囲はさらに注目する。



「やめてよ、みんなのまえで抱きつかないで」

「だって~」



咲良よりはるかに背が高いのに、子犬みたいな目で彼女を見つめるもんだから、咲良も何も言えなくなっている。




「咲良がお願いがあるっていうから、速攻飛んできた」



携帯を開いてわざわざそのメールを嬉しそうに見せる。

咲良、メール苦手だからあまりしないんだよな。




「由紀」


「んえ?」



2人のイチャイチャぶりに見とれていた私に急に話が降られて焦る。


咲良の目が真剣だったから、構ってほしいオーラ全開の川瀬君を彼女に倣って無視し、彼女に向き直った。




「由紀さ、そろそろ新しい恋探してもいいんじゃない?」



言われて、一瞬時間が止まる。



私もそうするべきじゃないかとは思っていたから。



不毛な恋をしたまま短い高校生活を終わらせてもいい、と思うほど槙野に執着したくない。
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