ヘタレぼりゅーしょん
「忘れられるのかな・・・」

ぼんやりつぶやく私の背中を、咲良はポンッと軽く叩く。


「すぐに忘れるのは無理でも、いい気分転換になるって。じゃあ陽太郎、あとはよろしく」

「ラジャーッす!」


可愛らしく敬礼の真似事をした彼は、早速持っていた携帯でメールを打ち出した。


「川瀬君、行動早!!」


急ぐほどのことでもないのに。しかも紹介とか・・・どうやってするのかどんなものなのか、さっぱり分からない。



私たちは3人並んで、駅までその話題で盛り上がりながら帰った。明らかに私邪魔者ですけどね。逃げようとする私の腕を咲良ががっちり掴んでいるから、雰囲気に流されてしまった。


「・・・というわけで。一応サッカー部の水野がちょうどフリーだったからお願いしてみましたー」


「えええ!?あのサッカー部次期キャプテンの?」

驚いたのは咲良のほうだった。名前は聞いたことがあるけれど、あんまり記憶に無い。高校に入ってから、ほかの男子を見る余裕も無かったし。


「ちょっと前に別れちゃったらしいよ。いっそのこと皆で出かけちゃう?」


私よりも咲良よりもノリノリな川瀬君。みんなでというか、咲良とお出かけしたいだけじゃないんだろうか。


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