ヘタレぼりゅーしょん
「そ、そうなんですか。…でも、春田が嫌がるようなこと、しないでくださいよ。こいつ…乱暴だけど、良い奴だから」

槇野の声とかぶるように、始業の予鈴のチャイムが鳴った。

槇野はそれを聞いて、教室の方へ足を向けた。


「じゃ、ウチのクラスこっちだから」


私の手を引いて。



「えっああ…」

されるがままに引かれて、ふと水野くんと目があった。


してやったり顔で、ニコニコと手を振ってくれた。


もしかして、彼はわざとカマをかけてくれた?

私のために。


出来る男は違う。


と思いながらも、今日の槇野もいつもよりカッコ良く見えた。


イケメン前にしてもちょっと怯んでたのに。



「ふぅ…なんなんだアイツは」

窓際まで逃げるように来て、やっと一息ついた。

「槇野…手。」

絞り出すように、照れを隠すように忠告してみた。
私の心臓破裂寸前ですから。

「うわっ!ごめん、なんか、想像を絶するイケメンに鳥肌と動揺で逃げ出したい衝動に駆られて、ごめん」


結局この行為すらヘタレの延長かい!

「ふっ…はは…やっぱ槇野は槇野だな」

手が離れて余裕が出来たからか、そんなヘタレ槇野に安心したからか、自然に笑みがこぼれた。

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