ヘタレぼりゅーしょん
私も帰っちゃおうかな。
降ろしかけたスクールバッグを、また肩に掛け直そうとしたとき
「掃除しないで帰ろうとしてる人がいまーす」
びっくりしてまたバッグを落としてしまった。
振り返ると、照れくさそうな顔をした槙野。
2本持っていた箒を1本
ほらよ、と投げてよこし自分の持ち場へ戻った。
あっけにとられて朝殴った彼の背中を見る。
槙野の背中なら何時間だって見ていられそうだ。
「槙野…」
「突っ立ってないでそこ掃けよ」
危うく「好き」だといってしまいそうになる。
もう口聞けないのかと思っていた手前、涙もこみ上げてきてしまう。