Place of the fate〜運命の場所〜
「いつもごめんね。なかなか覚えられなくて」
「いえ。全然大丈夫です」
その間にも、結衣ちゃんは俺には見せない表情で微笑んでいる。
なんで、あいつには笑ってんの。
モヤモヤとした気持ちが心の中に渦巻く。
「助かったよ。ありがとう」
おそらく探していたであろう資料を抱えながら、“優斗先輩”は出ていく。
「ねぇ、」
俺は再び本棚の整理を始めた結衣ちゃんの背後に回る。
さすがにこれにはびっくりしたのか、パッと振り返る。
「今の、誰?」
自分でも驚くほど怖い声が出た。
だから結衣ちゃんはもっと怖かったらしく、ビクッと肩を揺らしたあと、
「ち、中学からの先輩です」
と早口で言った。