Always
どうして、先生が浮かんだの?

何で…?

どうして…?

演奏が終わる。

テナーの渋い声も終わった。

「――モエチャン、大丈夫ですか?」

エリーさんの声に、私は自分が涙を流していたことに気づいた。

「――あ…すみません、いい曲だったので…つい…」

あまりにも古典的過ぎる言い訳に、我ながらウソをつくのがヘタだなと思った。

「私もこの曲を聞いて泣きそうになりましたからわかります」

エリーさんはひまわりのように笑って、私にティッシュの箱を差し出した。

「ありがとうございます…」

ティッシュを取り出すと、涙を拭いた。
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