Always
なれないお酒を飲んだせいで、彼女にバカなことを言って、こんなバカな展開になってしまっているんだ…と。

この状況を普段飲みもしないお酒のせいにできたら、どれだけ楽なことだろうか?

「お客さん」

イラ立ち半分、心配半分の運転手の声にハッと我に返る。

僕はスラックスのポケットから財布を出すと、そこから5000円札を出した。

「おつりはいいです」

運転手に一言そう告げると、芹沢さんと一緒にタクシーを降りた。

降りたとたん、雨が僕と芹沢さんの躰を濡らした。

タクシーは僕らが降りたことを確認すると、エンジン音を立ててその場から走り去った。

「――芹沢、さん…?」

呟くように彼女の名前を呼んで、顔を覗き込む。

彼女の目は、まだ酔っぱらったままだ。
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