Always
「――えっ…あ、ああ、はい…」

論文のことなんて、頭の中からすっかり忘れていた。

「よかったですよ」

先生が言った。

「あ…ありがとうございます…」

私は呟くように言うと、小さく頭を下げた。

「後、来月の卒業式についてなんですが…」

“卒業式”と言うその単語に、私の胸がチクリと痛んだ。

「あの…」

「はい、何ですか?」

「まだ研究を続けたいと言うのは、ダメですか?」

そう言った私に、先生は驚いたと言うように大きく目を見開いた。
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