Always
彼女の苦しそうな声に、一瞬止めようかと思った。

だけど…もう、戻れなかった。

「――少しだけ、我慢して…」

呟くように彼女にそう告げると、僕はゆっくりと中へ中へと押し進めた。

そのたびに、彼女は苦しそうに悲鳴をあげる。

この雨がやんだら、忘れるはずだ。

僕らが過ごしたことなんて、雨と一緒に消えてしまうはずだ。

雨の中に埋もれて、忘れてしまうはずだ。

だけど、忘れて欲しくないと思っている自分がいた。

矛盾しているのも、いいところだな。

僕は自嘲気味に笑いながら…静かに果てた。

僕らの記憶を知っているのは、未だに窓をたたきつけているどしゃ降りの雨だけ。
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