Always
聞き覚えのあるその声に、私は顔が青くなって行くのを感じた。

目の前に、風吾さんがいる。

「えっ、“萌さん”?」

阿久津くんは私の顔と風吾さんの顔を交互に見ている。

…最悪な状況だと思った。

阿久津くんの手は、私の腕をつかんでいる。

この状況に、風吾さんが疑わないと言う訳ないよね?

阿久津くんは目の前に風吾さんがいると言うのに、手を離そうとしない。

バコンッ!

「イテッ!」

持っていたカバンで阿久津くんの顔を殴りつけると、彼の手を振り払った。

「えっ、萌さん?」

驚いている風吾さんに駆け寄り、彼の手をひくとその場から逃げた。
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