Always
自分が今やったことが怖くて、騒ぎ出したその状況が怖くて、私はカバンを持つとその場から逃げ出した。

気がついたら、家の前に立っていた。

「――私は…」

呟いたとたん、母親の言葉が頭の中で響いた。

――仕方なかったの

――女は好きな人と一緒に生きたいと思った時、大事なものを投げ出してまでも、その人と一緒になりたいと思う生き物なの

……嫌だ。

…嫌だ。

嫌だ!

「イヤ―――――――――――ッ!」

悲鳴をあげて、その場に耳をふさいで座り込んだ。

私は違う!

私は“あの人”じゃない!

“あの人”みたいに、大事なものを投げ出さない!

私は“あの人”じゃない!
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