Always
「来月、N市へ移動になるんだ」

阿久津くんが言った。

「だから、もうこれからは芹沢とは会わないし、会えないよ。

今まで悪かった」

阿久津くんが頭を下げた。

突然頭を下げられ、私はどうしていいのかわからなかった。

ギュッと、風吾さんと繋いでいる手が強く握られた。

風吾さんに視線を向けると、彼は目でこう言った。

――ちゃんと彼の話を聞いてあげて

私はわかったと目で返すと、阿久津くんに視線を向けた。

阿久津くんが頭をあげた。

「――俺、高校の時から芹沢に憧れてたんだ。

クールで、一匹狼で、みんなとはいつも一線を置いていて…俺、芹沢がうらやましかった」

「ッ…」

初めて聞いた阿久津くんの気持ちに、私は黙って耳を傾けた。
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