ハリネズミの恋
連休と言うこともあってか、周りは右を見ても左を見ても人ばかりである。

うっかりしたら人の波に埋もれてしまうんじゃないかと言うくらいだ。

なのに、大勢の人の中で針井は目立っている。

針井は白のチュニック丈のレースのワンピースに黒のレギンス姿だった。

肩には黒のななめがけのバックがかかっていた。

普段の制服姿しか知らないだけに、私服姿は新鮮だ。

と言うか、針井らしい。

針井は針井で俺に気づいていないのか、読書に集中している。

もはや、いろいろな意味ですごい。

俺は人の間を縫うように針井に近づくと、
「おっす」

声をかけた。
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