ハリネズミの恋
針井は俺に気づいたと言うように視線を向けると、読んでいた本を閉じた。

「おはよう」

本をバックにしまいながら針井が返した。

「少し早い気もするけど、行くか?」

「いいよ」

針井が答えたのを確認すると、俺たちは駅に向かって歩き出した。

電車もゴールデンウィーク真っただ中と言うこともあってか、人が多かった。

もしものことを考えてドアの近くにいる俺たちな訳だけど…俺は針井にチラリと視線を向けた。

満員電車になれていないのか、針井はどこか苦しそうだ。

その様子に、俺はそっと針井の前に立った。
< 109 / 297 >

この作品をシェア

pagetop