ハリネズミの恋
恥ずかしそうに顔を赤くして、どこか慌てたように言う針井に、
「かわいいな」

無意識のうちに、俺の口からこんな言葉がこぼれた。

「えっ…なっ…」

針井は何を言われたのかわからないと言うように目を伏せた。

その仕草もかわいくてかわいくて…あー、俺は一体どうしたんだ?

「お、大政くん待たせちゃっていいの?」

針井のその一言に俺は本来の目的を思い出した。

でも、
「まだ時間があるからいいんじゃないか?」

これは半ば言い訳にしか過ぎない。

正直に言うと、針井とまだ2人きりでいたい。

「は、早く行こう!」

針井はくるりと背中を見せると、改札口に向かって歩き出した。
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