ハリネズミの恋
「かわいいヤツだ」

改札口に向かう針井の後姿に俺は一言呟くと、走って彼女の後を追った。

そう言えば…何で俺、針井に“かわいいかわいい”って連発してるんだ?

針井と2人で過ごした放課後以来、“かわいい”って言ってる気がするんだけど…。

まあ、いいか。


ここでもゴールデンウィークの影響なのか、『三坂百貨店』も大賑わいだった。

「すごい…」

あまりの人の波に針井は怖気づいている。

彼女がこう言う場所になれていないのはよくわかった。

「確か、イベントは…」

俺はジーンズのポケットから、この間太からもらったチラシを出した。

「会場は屋上でやるんだって」

そう言いながらエレベーターに視線を向けると、エレベーターは大混雑だった。
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