ハリネズミの恋
針井は首を横に振って、
「霧ヶ峰くんは悪くないから気にしないで。

わたしもすごく楽しかったから」
と、言った。

「そうか」

俺は言った。

「また機会があったらライブに行こうかな?」

笑いながらそう言った針井に、
「その時は俺も一緒に行っていいか?」

俺の唇が勝手に動いて、そんなことを言った。

「…えっ?」

針井が驚いたと言うように目を見開いて俺を見つめた。

「えっ…?」

俺…今、何を言ったんだ?

何故か俺たちの間に流れ出した変な沈黙に、
「あっ、いたいた!」

太の声が破った。
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