ハリネズミの恋
答えた後に針井は笑って、
「後…大政くん、ソロパートよかったよ」
と、言った。

「えっ…あ、ああ…」

褒められた太はちょっと照れたように笑って、爪で頬をかいた。

何だよ、ちょっと歌ったくらいで。

ちょっと歌って、褒められたくらいで。

そんなことを思った自分に、俺はハッと我に返った。

…今日の俺は一体どうしたんだ?

「じゃあ、俺は俺は?

針井ちゃん、俺のドラムたたきながらのヴォーカルどうだった?」

タケルが人差し指で自分を指差しながら針井に聞く。

「“針井ちゃん”って何だよ、“針井ちゃん”って!」
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