ハリネズミの恋
マーサ以外の好きな女の子ができた…か。

その言葉に俺の心が一瞬揺れたのは気のせいだと信じたい。

その言葉に頭の中に針井が浮かんだのは気のせいだと信じたい。

「――ナナ?」

マーサが俺の顔を覗き込んでいることに気づいた。

「何だよ」

「あれ、驚かないんだ?」

「えっ…」

俺はマーサが顔を覗き込むたびに驚いていたことを思い出した。

「やっぱり、ナナ…」

「だから違うってば!」

何かを言いかけたマーサをさえぎるように、俺は叫んだ。
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