ハリネズミの恋
カチャッと、ナイフとフォークをテーブルのうえに置いた。

「…そう、なのか?」

俺は太に言った。

「そうなのかって…まあ、今の今までだったからな」

太は押さえていたフライドポテトの皿から指を離した。

「針井を抱きしめたのは、ただ単に確かめたかったからなんだよ。

針井の躰からいつも甘い香りがして、太が今日持ってきたマシュマロと同じだったから」

「へえ」

太はスプーンでドリアをすくうと、口に入れた。

俺も置いていたナイフとフォークを手に持つと、食事の続きを始めた。

「最初は、針井が嫌い…と言うよりも苦手だったよ。

何考えてるかわからないし、無愛想だし、そのうえ毒舌だし」

「えっ、毒舌?

針井ってそんなところがあるの?」

驚いたと言うように返した太に俺はうなずいて答えた。
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