ハリネズミの恋
太は針井と話したこともなければ、声を聞いたこともないのだろう。

クラスメイトや太も知らない針井の意外な一面を俺が知っていると言うことに、優越感を感じた。

「だけど一緒に雑用とかやってるうちに…いろいろ見えてきたって言うのか?

笑うとかわいいとか、人見知りなところがあるとか」

ブツブツと独り言を呟く俺は、だんだんと太に言われた事実に気づかされる。

少し前までは、マーサのことで頭がいっぱいだった。

マーサに振られても、マーサが結婚しても、頭の中はいつもマーサのことでいっぱいだった。

それが今はどうなのだろう?

針井のことで頭がいっぱいで、いっぱいで、どうしようもなくなっている。

同時に、
「振られるのが怖いってか?」

太が言い当てた。
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