ハリネズミの恋
俺のノートのうえに、針井の人差し指が置かれる。

小さくて、華奢な指だった。

爪は丁寧に丸くカットされていた。

「ここはこの数式じゃなくて」

針井が解説を始めた。

人差し指でトントンと指差しながらの丁寧な解説に、俺と太は耳を傾けていた。

「…で、この数式を使った方が答えがすぐに出てくるの」

針井の解説が終わったのと同時に、俺のノートから指が離れた。

「すげー」

「わかりやすーい」

俺たちは感心して思わず声をあげた。

「これくらい、わかると思うんだけど…」

針井は照れたように呟いた後、プイッと目を伏せた。
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