ハリネズミの恋
廊下側のテーブルのうえに針井のカバンがあった。

針井はそこからノートを出すと、それを持って俺たちのところへ戻ってきた。

パラパラとノートを広げた針井は、俺の前にノートを置いた。

「すげー…」

針井のノートに、俺は感心してしまった。

字はキレイだし、ポイントは赤とオレンジで色分けされて、授業の内容が丁寧に書き込まれている。

そこに針井の人差し指が置かれる。

「この英文の訳がよくわからなくて…」

ガタッと椅子の音がして視線を向けると、太だった。

「そう言えば、世界史でわからないところがあったな」

太はブツクサと独り言を言いながら、本棚のところへ向かった。

そんな太の後ろ姿を見送った俺に、
「霧ヶ峰くん?」

針井が声をかけてきた。
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