ハリネズミの恋
…まさかとは思うけど、わざわざ遠回りしてまで俺に気を使ったんじゃねーんだろうな?

俺としてはむしろ、太もいた方が心強いのに。

もうすでに見えなくなった太の後ろ姿をまだ見ている俺に、
「霧ヶ峰くん?」

針井が言いにくそうに俺の名前を呼んだ。

「あ、ああ…」

俺はうなずくと、駅に向かって歩いた。

針井も俺の隣に並ぶと、一緒に歩いた。

「針井は、どこに住んでるの?」

針井に声をかけた。

「N駅」

「確か…ここから3つ先の駅、だったよな?」

そう聞いた俺に、針井はうなずいた。

「電車通学なんだ」

「うん、霧ヶ峰くんは?」

針井が聞いてきたので、
「俺はここから徒歩で30分のところ」
と、答えた。
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