ハリネズミの恋
「霧ヶ峰くんって確か、午後の100メートル走に出るんだったよね?」

そう言った後、針井は俺と顔をあわせた。

「まあ、うん…」

俺はうなずいて答えた。

「針井は確か…」

「わたしは借り物競走の前の競技の玉入れに参加したからもう終わった」

言いかけた俺をさえぎるように針井が言った。

「うん、そうだったな」

俺はうなずいた。

パーン!

空砲の音に視線を向けると、台風の目はもう始まっていた。

列の方に視線を向けると、太は前から4番目のところにいた。

棒を持っているその姿は、
「鬼だね」

針井が言った。
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