ハリネズミの恋
「あっ、太が走るぞ!

頑張れー!

太、頑張れー!」

俺の声につられるように、針井も競技の方に視線を向けた。

…よかった、向いてくれて。

俺はホッとした半面、言えばよかったかなと言う後悔がドッと胸に押し寄せてきた。

――100メートル走で俺が1位をとったら、俺とつきあってくれないか?

何で針井にそう言おうと思ってたんだ?

好きな色を当ててくれたこと、思ってたことが同じだったことが嬉しかったから言おうとしたのか?

友達…って呼べるのかどうかも、まだわからない関係だっつーのに…。


「来年は絶対に出ねーわ、台風の目」

昼休み、おにぎりを片手に太は毒づくように言った。

「お前、こけそうになったもんな」

笑いながら言った俺に、
「持ちこたえたところは褒めねーんだな」

太はガブリとおにぎりを口に入れた。
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