ハリネズミの恋
そのとたん、寧々の表情が固まった。

あれ…これ、さっきもなかったか?

そう思った俺に、黒髪を1つにくくったフォックス形の赤い眼鏡をかけた男が寄ってきた。

制服を着ているところを見ると、どっかの高校の生徒だろう。

年齢は…俺と同い年か、1つ上くらいかも知れない。

そいつは寧々の顔を覗き込むと、
「ああ、やっぱり寧々だ」
と、言った。

寧々はそいつから目をそらすようにうつむいた。

華奢な肩が寒さを感じたと言うように震えている。

「あの…失礼ですが、どちら様でしょうか?」

俺は男に声をかけた。

そいつは気づいたと言うように俺に視線を向けた。

「俺ですか?

F高校の氷室響(ヒムロキョウ)です」

そいつ――氷室響は言った。
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