ハリネズミの恋
「わたしは…」

寧々の声が震えている。

「わたしは…会いたくなんかなかった!」

吐き捨てるように、叫ぶように言うと、寧々は背中を見せた。

「寧々!」

俺の声から逃げるように、寧々は俺たちの前から逃げ出した。

俺は寧々の後を追った。

「寧々!」

手を伸ばして、寧々の腕をつかんだ。

「痛い!

離して!」

寧々はつかんでいる俺の手を払おうと必死だ。

「寧々!

落ち着け、俺だ!

七緒だ!」

俺が叫ぶように言うと、寧々はハッとしたように振り払うのを止めた。
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