ハリネズミの恋
校門に人だかりができている。

俺は傘を放り投げ、人だかりに飛び込んだ。

「すみません、失礼します」

人だかりを抜けて前に出ると、
「――寧々…!」

寧々と…彼女の腕をつかんでいる氷室がいた。

「寧々が俺に話すことはないかも知れないけど…俺は話すことがあるんだ」

眼鏡は雨の滴で濡れている。

「だからって…わざわざ学校を調べてここにくる必要なんてないじゃない!」

寧々は声を荒げると、腕をつかんでいる氷室の手を離した。

「寧々!」

俺は寧々の名前を叫ぶと、彼女に駆け寄った。

「――七緒くん…」

寧々が俺を見つめると、ホッとしたように名前を呼んだ。
< 254 / 297 >

この作品をシェア

pagetop