ハリネズミの恋
…そんなもの、俺には必要ないな。

もしも俺が世界を変えるほどの大きな力を持っていたとしても、寧々の存在はその力以上だ。

「何で今さら気づく必要があるんだよ…」

自嘲気味に呟いた後、ヘアバンドで目を押さえた。

いつの間にか大きくなっていた、寧々の存在。

最初は、苦手だった。

いつも無愛想で、何を考えているのかわからないし、無口だし…間違っても関わりあいにはなりたくないなって思ってた。

だけど寧々に近づけば近づくほど、俺の中にあったマーサへの未練はいつの間にか消えていた。

寧々を知れば知るほど、いつの間にか彼女にひかれていた。

意外と毒舌なこと。

笑った顔がかわいいこと。

マシュマロのような甘い香り。

いつの間にか大きくなっていた寧々の存在を、寧々が離れてしまった今になって気づくなんて…。
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