ハリネズミの恋
「結婚って…」

しかも9月って、急過ぎるにも程があるんじゃねーか?

フーゴは笑って、
「もう2度と彼女の手を離さないって決めたんだ。

僕のベビーリングは、もう彼女の手の中にある。

婚約指輪の代わりだ」
と、言った。

フーゴは俺の手の中にベビーリングを押し込んだ。

「人間にはチャンスがある。

だけど、そのチャンスは自分で作らないといけない。

作らなきゃ…」

フーゴの様子から、俺は彼も今の今まで大変な思いをしてきたんだと言うことを理解した。

両親の期待は、いつも2人の優秀な兄たちの方に向けられていた。

――兄さんたちが会社を継いでくれたおかげで、僕は好きな仕事に就くことができているんだけどね

いつだったか、フーゴは笑いながらそんなことを語っていたが、それを語る彼の瞳はいつも寂しそうだった。
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