ハリネズミの恋
傷つけることが嫌いだと言った。

傷つくことも嫌いだと言った。

根暗な文学少年だったフーゴの唯一の友達は、幼なじみのメグただ1人だけ。

「宝物は手に入らないんだよ」

フーゴが言った。

相手を傷つけて、自分も傷ついて…だけどそのたびに立ちあがって、立ち向かった。

「ナナは、バカじゃない」

フーゴが優しく微笑んで、俺の頭のうえに手を置いた。

そっと、その手は大切なものを扱うように俺の髪を握ったと思ったら、クシャクシャに乱された。

ツー…と、俺の頬を涙が静かに伝った。

「フーゴ…」

「んっ?」

「…約束、してもいいか?」

そう言った俺に、フーゴはもちろんと言って大きくうなずいた。
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