ハリネズミの恋
久しぶりに見たその無邪気な笑顔に、俺もつられるように声を出して笑った。

声を出して笑う俺たちを、何事かと言うようにいろいろな人たちが見ている。

でも今はそんなことを気にしている場合ではない。

嬉しくて仕方がない。

寧々とこうしてまた笑いあえたと言うことが、幸せで仕方がない。

気が済むまで笑いあった後、
「わたしたち、いつの間にか戻ってるね」

寧々が言った。

「そうだな」

俺は返した。

「わたしたち、もう戻れないかなって思ってたの。

カッとなっちゃったとは言え、人を傷つけたわたしをもう七緒くんは…」

泣きそうになった寧々をさえぎるように、
「寧々は寧々だ」

俺は言った。
< 272 / 297 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop