ハリネズミの恋
ステージの脇から、氷室のダンスを見ていた。

「すっげー…」

爆音が流れるミュージックで踊る氷室のその姿を例えるとするなら、“漢(オトコ)”だった。

グルリと、派手に爆転する姿に会場が盛りあがる。

クッソー…。

俺、爆転できねーんだよ…。

「霧ヶ峰」

岩田さんが俺の名前を呼んで、ポンと肩をたたいた。

俺は氷室から岩田さんに視線を向ける。

「大事なのは、“自分自身”だ。

霧ヶ峰は“自分自身”を全面的に表現すればいい」

爆音のミュージックが流れる中、岩田さんのその言葉はスッと俺の耳に入った。
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