ハリネズミの恋
ステージの裏に回ったとたん、
「今年は負けたかも知れんな」

氷室が声をかけてきた。

バサッと、タオルが頭のうえに乗せられた。

タオルから氷室を見あげる。

氷室はふうっと大げさに息を吐いた後、
「二連覇を目指してたけど…観客のあの様子を見たら、ハードにも程があった」

「…えっ?」

二連覇?

訳がわからないと言う顔をしている俺に、
「ひでーな、去年の決勝戦の相手の顔も覚えてねーのかよ」

氷室は呆れたと言うように返すと、フォックス形の眼鏡を外した。

「…あっ!」

素顔のその顔を見たとたん、俺は思い出した。

そうだ…!

こいつ、去年も決勝戦で対決したんだ…!
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