ハリネズミの恋
針井は俺から目をそらすと、作業に戻った。

パチン

パチン

パチン

ホチキスの止める音が、教室にやけに大きく響く。

針井は口を動かさない代わりに手を動かしている。

俺も口を動かさずに、手を動かしていた。

何かしゃべろよ。

俺がそう念じて見ても、針井の口が動く気配がない。

クソ、向こうがしゃべるまでこっちだって絶対にしゃべらないからな。

俺は心の中でそう毒づいた。

パチンパチンと、ただ手を動かす。
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