ハリネズミの恋
俺は手からプリントを落としそうになった。

…が、何とか持ちこたえた。

頑張ったぞ、俺。

つーか…今ここでしゃべるかよ。

さっきのさっきまで、何にも言わなかったくせに。

口が開いたかと思ったら、かわいくないことばかり言ってたくせに。

それで今ここでしゃべって、しかも出てきた言葉が“ありがとう”って…。

「く、クラス委員に選ばれた以上は当然だろうが!」

俺は言い返した。

「って言うか、俺は担任に後から文句言われるのがめんどくさいから手伝っただけだし…」

…って、あれ?

俺は一体何が言いたいんだ?

もういいや!

「じゃ、俺先行くから」

俺は針井にそう言うと、早足で職員室に向かった。
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