ハリネズミの恋
フワリと、俺の鼻に漂うのはお菓子のような甘い香り。

本当に何なんだろ、この香り。

チョコレート?

キャンディ?

バニラアイス?

…よくわかんねーな、おい。

パチンパチンと、ホチキスの止める音だけが2人だけの教室に響いている。

「ああ、そう言えば」

俺は針井に話しかけた。

針井が手を動かしながら視線だけ俺に向ける。

いや、待て。

俺、今何で針井に話しかけたんだ?

話す内容は当然、考えていない。
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