龍神様との恋愛事情!
午後の今頃は千早様が屋形にいない。
長の御役目の一つである見回りに出掛けている。
「あの、痛いです!」
「あら、そう。ひ弱なのね、人間て」
「そんなあなたじゃ、千早様に抱かれたらすぐに壊れてしまいますわよ?」
皮肉な言葉に周りからの嘲笑が加わり、私は俯いて黙り込んだ。
どうして今更!?
しかも千早様がいないこの時間に、私に何の用なの?
腕を引っ張られ、転びそうになりながら三階へ向かうための外廊下を渡る。
今日、私が着ている服は淡いピンクの浴衣だ。
普段着が着物の朱美ちゃんに「今は夏の時期だから浴衣よね!」と言われ、着付けてもらった。
浴衣なんて着慣れないから動きづらいし歩きづらい。
これだけグイグイと引っ張られて派手に転ばなかったのは奇跡だ。
短い橋を渡った先の階段前で、パッと腕を放される。
「人間は飛べないのよね?頑張って両足使ってお上がりなさい」
私をここまで引っ張ってきた紅い髪の龍神様が見下すように言った。
別に人間にとって、足で階段を上がるのは普通のこと。
頑張らなくても上がれるもん!