龍神様との恋愛事情!


 西には雪山がある。

そこは一年中、雪が降り続いている寒いところで、雪山に近づくにつれ夏だというのに肌を刺すような冷たい風が身体に吹き付けてくる。


確か…毒龍は南に住んでいるんじゃなかったかな?

どうして西の雪山に…?


西で暮らしているのは白龍だよね。

伊吹様や静寂様がいる雪山…。


私は冷えてきた肩をブルッと震わせて、どんどん離れていく転生山の方を見た。

もしかしたら追いかけてくる千早様の姿が見えるかもしれない。


けど、視界は段々と白くなっていき、頭上には雪がちらつき始めた。


「寒っ…」


「もうじき着く。我慢しろ」


素っ気ない言葉だったけど、シトリ様は抱きしめる力を強くしてくれた。

さっきよりもシトリ様の体温が感じられてあったかい。


気遣かってくれたのかな?

シトリ様って意外と優しい…?


こっそりシトリ様を見上げていると…。


「あれだ」


前方に注がれた眼差し。

私も進行方向を見た。

すると五重塔(ごじゅうのとう)によく似た、高くて細長い建物が視界に入った。


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