龍神様との恋愛事情!
「…嬉しいね」
「えっ…?」
意外過ぎる言葉に、私は思わず顔を上げた。
「君は私を頼って来てくれたんでしょう?嬉しいな」
千早様は笑っていた。
嫌みな笑顔じゃない。
優しい眼差し。
慈愛に満ちた微笑みだった。
「おいで。何度だって君の願いを叶えてあげる」
差し延べられた手は、私の心を救った。
「なんで…なんでそんなに、優しいんですか…?」
彼の手をギュッと握り締めて問う。
「優しいかい?案外私も自分の都合で動いているんだよ。ここで沙織に頼りなるところを見せれば、ころっと惚れて妻になってくれるかもってね」
冗談なんだか本気なんだかわからないことを言いながら、千早様は私の涙を舐めた。
「さて、では塒山へ行こうか」