龍神様との恋愛事情!

私は、二階の廊下で立ちすくむしかなかった。

みんなの泣き声が自分の「死」を決定づけるものとして虚しく響く。


目が熱くなったかと思うと、唐突に涙が溢れた。


……おかしいね。

私、もう幽霊なのに……涙が出るなんて。

身体がなくても、人って心で……魂で泣けるんだね。


どうしよう…。


止まらない…。




私はそっと屋形から飛び去った。

今の私は幽霊だから、ふわふわと空中を漂える。

便利だけど、それがなんだろう…。


誰にも気づいてもらえない。

この世界で、たった一人になってしまったよう。


この虚無と孤独と寂寥(せきりょう)感の前では、初体験の空中浮遊の楽しさなんかどうでもよくなる。


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