腕枕で眠らせて*eternal season*



「目を逸らさなければ、いつかきっと思い出に変えられる日がきます。

僕は努力します。
貴女に…好きになって貰ったことも、憎まれたことも。美織さんを傷付けた貴女に怒りの感情を持ったことも。そして、この店と僕をいつも支えてくれることへの感謝も。

全部を受け止めて、僕は貴女と新しい関係を築きたいと思います」



「ば…バッカじゃないの!?」



あまりにも彼らしい甘っちょろい言葉に、嘲笑した。


「そんなこと出来るわけないでしょう!?いい歳して夢見がちなこと言わないでよ!」


バカみたいに前向きで、ムカつくほど正々堂々としていて。


「こういう時はね、黙って見送るのが大人の恋のルールですよ!オーナーってイケメンのわりに恋愛偏差値低いんじゃない?」


自分がそうであるように、他人も純粋な善意を持っていることを疑いもしない。


「大体ね、オーナーは女心が全然分かってないんだから。いい歳して鈍感過ぎます!」


そして、ぶん殴ってやりたいくらい


「まったく!天然タラシなんだから」


泣きたいくらい


「……私は……オーナーみたいに善人じゃないんで、受け止めるには時間が掛かるんです」


「…幾らでも、待ちますよ」


優しい。





―――悔しいなあ。


この傷みを受け止めあってまで、新しい関係を築こうだなんて。


それが、どれだけ私を喜ばせてしまってるか分かる?


『僕には貴女が必要だから、ふたりで頑張りましょう』って、100パーセント下心なしで言ってしまえるこの天然タラシ。


悔しい。そんな事をまっすぐに言って、私の心を離れさせなくさせる貴方が、大嫌いで



「ホント、甘っちょろくって夢見がちな人ですね。あーあ、なんでこんな男好きになっちゃったんだろう。

…でも、経営者としての貴方は尊敬してますから。これからも」



大好き。



「…ありがとう、玉城さん」



その笑顔、ズルいよ。

あんな酷い事をした私に、そんな笑顔。


「…あと…鈴原さんにゴメンって伝えておいて下さい」


ほら。素直にゴメンまで言わされちゃった。


あーあ。悔しいなあ。




< 107 / 150 >

この作品をシェア

pagetop