腕枕で眠らせて*eternal season*
「目を逸らさなければ、いつかきっと思い出に変えられる日がきます。
僕は努力します。
貴女に…好きになって貰ったことも、憎まれたことも。美織さんを傷付けた貴女に怒りの感情を持ったことも。そして、この店と僕をいつも支えてくれることへの感謝も。
全部を受け止めて、僕は貴女と新しい関係を築きたいと思います」
「ば…バッカじゃないの!?」
あまりにも彼らしい甘っちょろい言葉に、嘲笑した。
「そんなこと出来るわけないでしょう!?いい歳して夢見がちなこと言わないでよ!」
バカみたいに前向きで、ムカつくほど正々堂々としていて。
「こういう時はね、黙って見送るのが大人の恋のルールですよ!オーナーってイケメンのわりに恋愛偏差値低いんじゃない?」
自分がそうであるように、他人も純粋な善意を持っていることを疑いもしない。
「大体ね、オーナーは女心が全然分かってないんだから。いい歳して鈍感過ぎます!」
そして、ぶん殴ってやりたいくらい
「まったく!天然タラシなんだから」
泣きたいくらい
「……私は……オーナーみたいに善人じゃないんで、受け止めるには時間が掛かるんです」
「…幾らでも、待ちますよ」
優しい。
―――悔しいなあ。
この傷みを受け止めあってまで、新しい関係を築こうだなんて。
それが、どれだけ私を喜ばせてしまってるか分かる?
『僕には貴女が必要だから、ふたりで頑張りましょう』って、100パーセント下心なしで言ってしまえるこの天然タラシ。
悔しい。そんな事をまっすぐに言って、私の心を離れさせなくさせる貴方が、大嫌いで
「ホント、甘っちょろくって夢見がちな人ですね。あーあ、なんでこんな男好きになっちゃったんだろう。
…でも、経営者としての貴方は尊敬してますから。これからも」
大好き。
「…ありがとう、玉城さん」
その笑顔、ズルいよ。
あんな酷い事をした私に、そんな笑顔。
「…あと…鈴原さんにゴメンって伝えておいて下さい」
ほら。素直にゴメンまで言わされちゃった。
あーあ。悔しいなあ。