腕枕で眠らせて*eternal season*
……なんか、上手くいかない。
ベッドで抱き寄せられた後、結局私はそのまま紗和己さんに抱かれてしまった。
「どうしたんですか。難しい顔して」
そして、ただいまふたりで掻いた汗を流すべく一緒にお風呂タイム。
ぬるめの湯船に向かい合って浸かりながら、考え込む私の顔を紗和己さんが覗いてくる。
「…もしかして、今夜はお疲れでしたか?…すみません…強引に誘ってしまって」
ああもう。違う、違うの!
私が紗和己さんに気を使われてどうするのよ!
私は理不尽な膨れっ面をして、水飛沫を上げながら彼の胸板をポカポカ叩いた。
「もー!紗和己さん優し過ぎて上手くいかない!」
「えっ、えっ?なんですか?」
「私、紗和己さんにもっと何かしてあげたい!私、自分をもっと紗和己さんの為に使いたいの!!」
まったく理不尽な八つ当たりだと思う。
こんなの彼の為じゃない。自己満足だって分かってる。
でも――
「私……もっと紗和己さんの何かになりたい……」
ぱしゃん、と水音を起てて彼を叩いていた拳をお湯に沈めた。
ホワホワの湯気と入浴剤のアロマの香りに包まれて落ちる沈黙。
ぶつけてしまった自分のワガママさ加減に、なんだかしょんぼりとして項垂れてしまったけれど…
まるで時間が止まってしまったかのような沈黙の長さに、驚いて顔を上げた。
…紗和己さん…まさか、怒ってる?
そんな不安が頭によぎったけど、正面の彼は少し驚いたような顔をして私を見ているだけだった。
「……ごめんなさい…怒った…?」
おずおずと聞いた私に、紗和己さんはハッと我に返ったような表情をするとフルフルと首を横に振った。
そして、いつもの優しい笑顔になって私に微笑み掛けると
「……美織さん、冷蔵庫に白ワインが冷やしてあるんです。お風呂から出たら一緒に飲みませんか?」
そう、告げた。