腕枕で眠らせて*eternal season*
――さっきの私の訴えはいったい何だったんだろ。
拍子抜けするほど何も反応が返ってこなかった事に、釈然としない気持ちのまま冷たい白ワインをちびちびと飲んだ。
……仕方ないか。
自分でも何を求めてるんだかよく分からないんだもん、紗和己さんだって答えようがないよね。
気付かれないほど小さな溜め息を、滑らかなワイングラスの中にそっと落とした。
「美織さん」
ダイニングテーブルの向かい側の紗和己さんに呼び掛けられて、視線を上げる。
「来月、ちょっと足を伸ばして美術館に行きませんか」
美術館?美術館なら足を伸ばさなくっても東京にいっぱいあるのに?
不思議に思っていると紗和己さんはニコリと口角を上げて言葉を続けた。
「欲しいものがあるんです。お付き合い願えませんか」
その言葉に私はますますキョトンとしてしまう。
欲しいもの?何だろう?紗和己さん、絵でも買うつもりかな?
「もちろん構わないけど…」
言い掛けて、私はとてもイイ事を思い付く。
「あっ、じゃあその欲しいもの、私にプレゼントさせて!紗和己さん来月、お誕生日でしょ」
紗和己さんの欲しいものが数百万の絵画とかじゃ無いことを祈るけど。
でもやっぱり、何かしてあげたい気持ちは変わらない。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
紗和己さんは珍しく素直に私の厚意に頷くと、もう一度ニコリと微笑んで何故だか私のワイングラスに自分のグラスをカチンと合わせた。
硝子のグラスの中で、薄い黄金色がゆらゆらと揺れた。