腕枕で眠らせて*eternal season*
体外受精と云う選択肢。
最後の手段とも云えるそれに私が踏み出せないのは、とても怖いからだった。
痛みや身体に掛かる負担ではなく、それが失敗した時の未来が何より怖くて。
抗精子抗体を持った女性の体外受精は成功しやすいと云う。けど、その一方でなかなか上手くいかず何度も試みる人も大勢いる。
―――何度も。
越えられるだろうか。私に。
きっと、落ち込んでゆく私を、自分の哀しみを堪えて励まし続ける紗和己さんの顔を。
私はいつまで見つめる事が出来るんだろうか。
今でも潰れそうなほど抱えてるこの罪悪感に、私は何回、何年、耐えられるんだろう。
そして。
そんな私の姿に、きっと紗和己さんは自分を責める。子供を望んでしまった自分を。私の前で夢を語ってしまった自分を。
自分の願いのせいで私の体に負担を掛け続ける罪悪感を、紗和己さんは抱えてずっと過ごすのだろう。
お互いがお互いの罪悪感に苦しみながら過ごす毎日に、いつの日か笑顔が消えていく事が私は怖くて。
けれど。でも。なのに。
踏み出せなければ、彼の夢を叶えてあげる事は出来なくて。
「……紗和己さん……」
どうしたらいいのか分からない。
誰よりも愛しいひとの
誰よりも幸せにしたいひとの
笑顔の作り方が私にはもう分からない。
こんなに好きなのに
こんなに愛しているのに
私はこれっぽっちも貴方を幸せにしてあげられない。