腕枕で眠らせて*eternal season*



紗和己さんの言葉が、胸をぎゅうぎゅう締め付けて痛ませるから、私は馬鹿みたいな笑顔のままボロボロ涙が出てしまって。

涙といっしょに、心が零れてゆく。



「…だって…私じゃもう紗和己さんを笑顔に出来ない…!

こんな体で!子供も出来なくて心配掛けてばかりで!!私に何が出来るって云うの!?

貴方の夢も笑顔も掻き消して!申し訳なくて自分を恥じて!!

それでも隣に居続けなきゃいけないのが夫婦なの!?」



自分の口から吐き出した言葉は、とても冷たくてとても汚なくて。

けれど、全て私の本心だった。


苦しくて。

苦しくて、苦しくて、苦しくて。

全てを吐き出した私の本心だった。



「…美織さん………」


とても驚いた顔をした紗和己さんが、次第に顔を哀しい色に染めていく。


きつく私の腕を掴む紗和己さんの手のマリッジリングが、強く腕に当たって痛いと思った。

まるで、なにかの罰のように。



そして
哀しげな色を浮かべた紗和己さんが、口元だけわずかに微笑ませて言った。



「……美織さんにとって……夫婦って…家族って……なんですか…?」



とても。とても切ない声で。


「…子供が出来ないから?夢が叶えられないから?それがどうかしたんですか?」


「………っ…」


その言葉に、私の瞳が大きく見開く。


「僕にとって重要なのは夢の形じゃありません。美織さん、貴女といっしょに見る事が、何より大切なんです。
どうして…どうしてそんな事が分からないんですか!?」


強く私に問うた紗和己さんの目はまっすぐに私を映し続けていて。
切ないほど哀しいほど、私だけを映していた。


「子供がいなければ幸せになれないんですか!?家族じゃないんですか!?
…僕たち…もう家族でしょう?水嶋紗和己と、水嶋美織と、ふたりきりの幸せな…家族でしょう…?」


「……紗和己さん……」



紗和己さんの瞳に、私の姿が映ってる。
ボロボロと涙を零す、私の姿が。

溢れる涙に、堪えきれず声をあげて泣いた。体が震えるほど激しく大声で泣いて

紗和己さんが抱きしめてくれた。


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