腕枕で眠らせて*eternal season*



姿を見せ始めた朝陽が、ゆるりと部屋に明るさをもたらす。


優しくて眩い陽射しは、私たちを照らし出してくれて。

ただそれだけの事が私は嬉しくて、嬉しくて

「……紗和己さん……」


泣き濡れた顔が、綻んでいくのが自分でも分かった。


たくさん泣いてグズグズでちっとも可愛くない笑顔だったけど、紗和己さんはそれを真っ直ぐ見つめて嬉しそうに微笑む。



「美織さん。僕はね、あきらめが悪いんですよ。知ってるでしょう?

どんな事が起きたって何があったって、僕は貴女の隣を絶対に離れません。

そして人生が終わるとき、必ず貴女に言わせてみせます。『水嶋紗和己の妻で幸せだった』と」



それが、私にはまるで2度目のプロポーズのように聞こえて。


私はゆっくりと彼の大きな手に自分の手を重ねて、答える。



「ありがとう。紗和己さん」


と。

涙に濡れながら、心からの笑顔で。








朝陽が照らし出すリビングで、紗和己さんは優しく私を抱きしめ続けてくれた。



全てを受けとめる広い胸が、愛しげな眼差しが、大きな手が、温かい。

心に、身体に、紗和己さんの温かさが沁みていく。



「美織さん」


心地の良いぬくもりに身を委ねまどろんでいた私の髪をゆっくり撫でながら、紗和己さんが静かに呼び掛けた。


「……“幸せ”って、人によって定義は様々だと思うけど、でも僕はこう考えるんですよ」


朝の純粋な光が、穏やかに語る彼の顔を綺麗に映し出している。


「幸せって、人生の中でどれほど笑顔で『ありがとう』を言えたかじゃないかなって」


光の中でまっすぐに言葉を紡ぐ彼が、美しい。


「『ありがとう』って、笑って伝えずにはいられないほどの喜びは、間違いなく“幸せ”だと僕は思うんです」



そして、その瞳が私を映し出し、そっと微笑みかけて……告げた。



「美織さん、ありがとう。
僕と一緒に生きてくれて…ありがとう」





―――ありがとう。


ありがとう。紗和己さん。ありがとう。

私と一緒に生きてくれて、ありがとう。



どんな人生もふたりで重ねると誓ってくれた貴方に誰よりも伝えたい。


煌めく朝陽の中で、愛と感謝を籠めて。


ありがとうを、貴方に。




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