腕枕で眠らせて*eternal season*
ところが、軽視していた風邪は数日後からとんでもない吐き気を引き起こす。
仕方なく近所の病院に行った私だったけど…
「念のため、尿検査と血液検査もしましょう」
症状を聞いてただの風邪と切り捨てずに、詳しく検査してくれたこの病院を、私は心から感謝する。
「水嶋さん。妊娠の陽性反応が出てますよ。多分つわりだと思いますけど、身体に影響ない風邪薬も一応出しておきますね」
「…………へっ?」
それはそれはアッサリとお医者さんは言ったから。私の頭はその言葉を噛み砕くまでとんでもなく時間を要した。
薬の入った白い紙袋を持ちながら、ボケッと家までの帰路を歩く。
そっかーつわりかー。そう言えば生理遅れてたっけなあ。風邪じゃなかったのかー。良かった、つわりなら紗和己さんに感染らないもんね。
もうすぐ結婚記念日のお祝いで旅行にいくのに、それまでに治るかなあ。治るといいなー。ちゃんと薬飲もう、って、これは風邪薬か。
お医者さん、つわりの薬も出してくれれば良かったのに。あ、そもそも薬がないのかな。つわりって病気じゃないもんね、妊娠だもんね。治しようがないか。ははは。
……ははは?
………………………………。
「さっ!さっ、さ、ささささ!!紗和己さんっっ!!!たっっ!!大変!!!つわりが!!治らないけど!!つわりが!!」
「な、なんですか美織さん!?落ち着いて下さい!」
この時の電話の慌て具合は、ずっと後になっても紗和己さんがお腹を抱えて笑うほどの笑い話になる。
…だって、しょうがないじゃない。すっごくビックリしたんだもの。